コラム


わたしの好きな長歌 〜額田王〜

「額田王」という名前を一度は聞いたことがあるでしょうか?
万葉集の代表的歌人の一人で、最初は大海人皇子(天武天皇)に嫁ぎ、後に天智天皇に愛された女性と言われていますが、身分や出自などは不明で、謎の女性という印象がたいへん強いです。ただ、とても奔放な女性だったと記憶しています。

たまたま、滋賀県は蒲生野を通ったので、つい思い出してしましました。
彼女の歌は「万葉集」に多く登場していますが、今日は私が好きな彼女の歌を紹介したいと思います。

天皇の内大臣藤原朝臣に詔して、春山の万花の艶と秋山の千葉の彩とを競はしめたまひし時に額田王の歌を以ちて判れる歌

冬木成 春去來者      冬ごもり 春さり来(く)れば

不喧有之 鳥毛来鳴奴    鳴かざりし 鳥も来鳴(きな)きぬ

不開有之 花毛佐家礼抒   咲かざりし 花も咲けども

山乎茂 入而毛不取     山を茂(も)み 入りても取らず

草深 執手母不見      草深み 取りても見ず

秋山乃 木葉乎見而者    秋山の 木(こ)の葉を見ては

黄葉乎婆 取而曾思努布   黄葉(もみぢ)をば 取りてそしのふ

青乎者 置而曾歎久     青きをば 置きてそ歎(なげ)く

曾許之恨之 秋山吾者    そこし恨(うら)めし 秋山われは


額田王といえば、大海人皇子との相聞歌が有名だけど、私自身はこちらの長歌のほうが好きです。

この歌は、天智天皇が藤原鎌足に春と秋とどちらがすぐれているのかを歌で競わせたときの歌です。その時代は漢詩がもてはやされていた時期に、敢えて和歌で意見をだした彼女の強い意思が感じられます。
 春の長所・短所、秋の長所・短所を述べておいて読者の気をひいておきながら最後には自分の意見をきっぱりと言える・・歌としてはおそらく最初に歌の構成を考えた歌だったと思います。「秋山われは」という締めくくり方が私は大好きですね。

例外はあるでしょうが、小説などには必ず構成というものが必要になってきます。そういった面もふまえて、この歌をもう一度読み返してみると・・・ちょっと違った感じ方をすることができるかもしれません。

 万葉集の歌を見てみると、額田王のようにかなり奔放的な女性の歌を多く発見することができます。この頃の時代というのは、かなりほんわかとした時代だったかもしれませんね。

最後に、額田王の歌

熟田津尓 船乗世武登 月待者 潮毛可奈比沼 今者許藝乞菜

熟田津(にきたつ)に 船(ふな)乗りせむと 月待てば
潮もかなひぬ 今は漕(こ)ぎ出(い)でな